終活事始め

最大の終活は、健康寿命をいかに長く維持し、周りに負担・迷惑をかけない取り組みをすることだと思います。

TV「キッチン革命」を見て

 3月最終土日の2夜連続スペシャルドラマ「キッチン革命」を見ました。
 主人公は、葵わかなさんから薬師丸ひろ子さんにバトンタッチして演じらた香美綾子です。
 この香美綾子という人物のモデルが女子栄養大学の創設者であり、日本の現代栄養学の礎を築いて「栄養学の母」とも言われる「香川綾」(明治32年―平成9年 享年98歳)さんです。


 女子栄養大学のHPにある「香川綾物語」を見ました。
 ドラマは随分脚色されていますが、医師であったことから、当時有効な治療法がなかった脚気を治療するための胚芽米を使った病院食を作ることに挑戦されたり、病気を治すことだけではなく病気を予防することも医者の大切な仕事として栄養学の道に進まれ、だれでも美味しく栄養満点な料理を作るため、調味料の分量を数値化し、料理の手順、火加減や煮炊きの時間など美味しさの秘訣の最大公約数としてまとめた調理カード(レシピ)を作られたなど現代まで通ずる「家庭料理」の礎を築かれた方のようです。
 全く存じ上げず、もっと脚光を浴びてしかるべき方ですね。


 話はそれますが、主人公が医師として取り組んだ“脚気”ですが、江戸時代、それまで主に玄米を食べていた江戸の都市部の人々にも白米食が広がり、江戸を訪れた地方の大名や武士達の体調が悪くなることが多くなったのですが、玄米食が中心だった故郷に帰ると 治ってしまったため、この病は「江戸わずらい」と呼ばれていたということは有名なので、医学的根拠はなくとも、生活の知恵として克服されていたものと認識していた。


 物語当時有効な治療法もなかったということが疑問だったので調べてみました。
 明治44年にビタミンB1が発見され、大正13年には日本でも公的に脚気の主因がビタミン欠乏であることが認められましたが、脚気の罹患はあまり変わらず、第二次世界大戦前まで年間に1万人前後の人が脚気で亡くなっていたようです。
 脚気が終息したのは戦後になってからで、これは、白米を好む食文化だったからのようです。白米がごちそうで、十分な副食を食べる習慣ができるまではビタミンB1不足に陥り易かったようですが、大正13年に脚気の主因がビタミン欠乏であることが認められてから何も対策をしなかったのでしょうか?


 さらに驚いたことは、海軍では明治17年に、脚気を予防するため麦飯中心の食事が示されましたが、陸軍ではあいかわらず脚気が発生し、日露戦争における脚気による死亡者は、海軍ではゼロだったのに、陸軍では3万人に及び、戦死者以上に脚気で亡くなっている人数が多いのです。
 科学的根拠は確立していなくとも、陸軍はベンチマークすべきなのにプライドでしょうか、海軍は極秘事項にでもしたのでしょうか、なぜ広く国民に周知するようなことをしなかったのか、それをしない思考には疑問です。それほど兵隊のみならず庶民の命は軽んじられていたのでしょうか。


 主人公の話に戻りますが、明治や大正の時代には、料理は誰にでも作れるものではなく、しょうゆや塩など調味料の加減は「料理人の勘」、火を通す時間は「ほどほどに」や「火が通ったら」など「料理人の経験」で、味の決め手は「隠し味」や「愛情」と定量的ではなかったものを素材や調味料を計って数量化し、料理の手順をわかりやすく文章にして、誰もができるようなレシピを初めて作りあげられ、計量カップと計量スプーンも作られたのです。
 そして、栄養学や料理界の基礎を築かれました。


 栄養学の重要性などほとんど認識されておらず、脚気をはじめとした栄養のアンバランスや無知から生じる病気に多くの人が苦しんでいた中で、「命の源は栄養にある。生きている限り、人は食べなければならないが、食べ方を間違えれば病気にもなる。正しい栄養知識を広め、病気を予防することが自分の使命なのではないだろうか」と考えられ、栄養学の研究に没頭し、戦後は栄養学部がある大学の創立に情熱を傾けられたのです。


 「香川綾物語」には、「綾はあることに気がつきました。それは、「味の決め手は塩分にある」ということです。人の体液は0.9パーセントの塩分を含みます。食事での塩分摂取量は、この人の体液の塩分濃度のバランスを保てるものでなければなりません。しょっぱいものを食べると喉が渇くのは、体液の塩分濃度が濃くなったために水分で薄めようとする生理的な要求なのだ。食塩の量が決まれば、甘みや酢とのバランスなど、ほかの調味料の割合もしぜんに導き出されます。そして、「料理を初めて習う人でも、調味量の割合が数字で表されていれば、すぐれた調理人が作る料理の80パーセントくらいは再現できる」と確信しました。」とあるのですが、僭越ながら、ここのところは賛同しかねます。
 このブログにも既に書いていますが、私は、味の決め手は「出汁」であって、塩味はほんの僅か加えれば足りると考えています。
 もちろん織田信長の逸話ではないですが、体を使って汗をかくような方々や焼き物などは対象外ですが…。


 「栄養学と私の半生記」には、「おいしい」「食べて幸せ」と思える料理を作るには、作る人の愛情や食卓の楽しさが大切だと書かれているそうですが、それには同感です。


 私も料理は好きで、これまで料理教室に通ったり、NHKの「きょうの料理」と「きょうの料理ビギナーズ」は定期購読し、テレビも視聴しています。


 調理方法、時間、調味料の分量など分かりやすく、間違えないですが、味を見ながら自分好みにしています。
 それでもレシピ・基本の調理方法があるだけでも失敗がないので大いに有難いです。


「きょうの料理」は、調理器具の進化もあり、以前と比べて、料理は随分手間暇が省けていますが、忙しい方々を意識してかお手軽料理が多いように感じます。
 作ってみたいと感じる魅力ある料理が少ないということです。
 例をあげれば、「きょうの料理」の3月号の表紙は栗原はるみさんの「春のグリーンサラダポーチドエッグのせ」、4月号はワタナベマキさんの「春キャベツのサッと煮」ですので、本の中身も推して知るべしというところです。
 長寿番組で、ネタ探しが大変だと思いますが、元気がでない料理よりは、定期的な繰り返しでもいいので工夫をお願いしたいところです。