終活事始め

最大の終活は、健康寿命をいかに長く維持し、周りに負担・迷惑をかけない取り組みをすることだと思います。

活性酸素

 ミトコンドリアが酸素を使って作り出すATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー分子が、全ての生物の生命活動に必要なものであることは、2回に渡って書いてきましたが、そのミトコンドリアは、生体内の約95%の酸素を消費し、そのうち1~3%(3~10%説あり)が活性酸素種に変換されると推測されています。


 活性酸素とは、分子の状態が不安定な酸素です。
 酸素の化学式はO²で、活性酸素の分子構造は、本来の酸素分子とそれほど大きく違いませんが、酸素分子以上に不安定かつ強引な性質を持っていて、化学反応を起こしやすい性質です。
 このため、糖質、脂質、アミノ酸など、各器官を構成する分子を酸化するなどして、 体内に悪影響を与えてしまいます。


 といっても、活性酸素のすべてが悪いというわけではありません。
 活性酸素は、白血球の殺菌作用などの生理現象にも関与しており、ある程度は必要な面もあるといえます。
 白血球から産生される活性酸素(スーパーオキシド・過酸化水素など)は、体内の免疫機能や感染防御の重要な役割を担っていますし、細胞間のシグナル伝達、排卵、受精、細胞の分化・アポトーシスなどの生理活性物質としても利用されていますので、活性酸素をただ消去すれば良いという安易な考え方はいけません。
 問題なのは、細胞や遺伝子を直接的または間接的に傷つけることで、こうした酸素毒ともいえる作用が生活習慣病や老化につながると考えられていることです。


 もともと生体内には、スーパーオキシドジムスターゼ(SOD)と呼ばれる活性酸素を分解する酵素や、抗酸化物質による活性酸素防御システムがあり、過剰な活性酸素を除去するようになっていますが、SODなどの活性は年齢とともに低下し、体内の抗酸化能力は次第に衰えます。
 また、疾患によっては、体内の除去システムでは対応しきれない大量の活性酸素が発生するケースもあるため、年齢が若くても生活習慣病になってしまうこともあります。


 活性酸素が関与していると考えられている疾患は数多く、動脈硬化、アルツハイマー型認知症、脳血管障害、糖尿病、がん・がんの転移、心筋梗塞、虚血症、虚血性疾患、腫瘍、胃潰瘍、肝硬変、脂肪肝、アルコール性肝障害、肺気腫、紫外線障害などがあります。


 そのため、活性酸素による障害を抑えるためには、活性酸素の産生が過剰になり、抗酸化防御機構のバランスが崩れた状態の酸化ストレスを引き起こさないよう、ストレス、紫外線、放射線、大気汚染、たばこ、薬剤や食品添加物・酸化された物質の摂取、激しい運動、多量飲酒に気をつけるとともに、有効な抗酸化物質を豊富に含む食品を積極的に摂取するバランスの取れた食事、適度な運動習慣ならびに十分な睡眠により、抗酸化防御機構を良好に保つことが重要で、それが老化や疾病に対する有効な予防手段となります。


 処理しきれなかった活性酸素は体内にたまり、より毒性の強いものへと変わっていきます。
 従って、常日頃から、上記の活性酸素の生産が過剰にならないよう気を付ける他、抗酸化機能を高める必要があります。
活性酸素から体を守る抗酸化機能は、体内で作られる「抗酸化酵素」と食事で摂取する「抗酸化物質」の2つがありますが、いずれもバランスの取れた食事が重要が重要です。


抗酸化酵素
・抗酸化酵素の主成分はたんぱく質です。
 日々の食生活において、しっかりたんぱく質を摂取することが重要です。
・亜鉛、銅、セレン、マンガンといったミネラルは抗酸化酵素の生成や活性の効果を高めて
 くれます。
 日本人は亜鉛の摂取量が少な目です。豚レバーなどの肉類、牡蠣などの魚介類、乳製
 品や、豆、ナッツなどから幅広く摂取できます。
 銅、セレン、マンガンは通常の食生活であれば不足することはないようです。
・活性酸素でダメージを受けた細胞の修復には、たんぱく質に加えて脂質や糖質の摂取も
 重要です。
 脂質は、活性酸素と反応し、体を酸化させる原因になりますので、必要以上に摂取しない注意は必要です。


抗酸化物質
 抗酸化物質は、大きくビタミンとポリフェノールに分類されます。
・抗酸化作用のあるビタミンは、抗酸化ビタミンと呼ばれ、ビタミンA(β—カロテン)、ビ  
 タミンC、ビタミンEなどがあります。
・ビタミンAは、レチノールやカロテンなど体内でビタミンAとして働く物質の総称です。  
 活性酸素の発生を抑えたり、取り除いたりします。
 緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンは抗酸化力が強く、体内で必要に応じてビタミンAに変
 わります。
 β-カロテンは生では吸収されにくいので、油と一緒に摂ると吸収率がアップします。
 鶏レバーや豚レバーなどの肉類、にんじんやほうれん草などの野菜類、バター、卵黄など
 に含まれます。
・ビタミンCは、活性酸素を抑制するだけでなく、過酸化脂質の生成を抑える働きも兼ねる 
 非常に強い抗酸化力を有します。
 過酸化脂質は細胞を傷つけて老化させ、さまざまな病気を引き起こします。
 食品からの摂取では吸収率は良いですが、一度に大量に摂取しても余った分は尿から排
 泄されてしまいますし、体内では作られないので、毎日の摂取が必要です。
 レモンやキウイなどの果物、ピーマンやブロッコリーなどの野菜に含まれます。
・ビタミンEは、抗酸化作用が強く、細胞膜のリン脂質の酸化を防ぎ、リン脂質が酸化して 
 できる過酸化脂質の発生を抑えます。 
 抗酸化力のあるビタミンA、ビタミンCと一緒に摂取することで相乗効果があります。
 アーモンドなどのナッツ類、植物性油脂、うなぎやたらこなどの魚介類に含まれます。
・ポリフェノール
 ポリフェノールには、フラボノイド系と非フラボノイド系があります。
・フラボノイド系ポリフェノール
 スーパーオキシドや一重項酸素を無毒化する作用があります。
 アントシアニン(赤ワイン)、イソフラボン(大豆)、ケルセチン(玉ねぎ)、カテキン 
 (緑茶)、テアフラビン(紅茶)、セサミン(ごま)、セサミノール(ごま)などに含ま 
 れます。
・非フラボノイド系ポリフェノール
 スーパーオキシドや一重項酸素を無毒化する作用があります。
 クルクミン(ウコン)、クロロゲン酸(コーヒー)、フェルラ酸(米ぬか)などに含まれ
 ます。
・これ以外にもコエンザイムQ10なども抗酸化物質です。


 抗酸化物質は、色の濃い植物性食品に多いという特徴があります。
 ただし、抗酸化物質は、どれか一つを食べれば済むというものではなく、どんなに強力な抗酸化成分でも、それぞれの能力(性質や作用の仕方)に違いがあるため、力を合わせないと活性酸素には対抗できません。 
 抗酸化物質を含む食品を数多く知っておき、毎日の食事の中でできるだけ多くの種類をとることが抗酸化食生活のポイントです。


・アルコールは、分解される過程で活性酸素を発生させます。
・喫煙は、大量の活性酸素を発生させる上に、抗酸化物質であるビタミンCを破壊します。
・適度な運動習慣は、活性酸素を増やさないため有効です。
 (運動で発生した活性酸素に対して、抗酸化酵素の働きが活発化され、活性酸素への抵
  抗力が高まることが分かっています。)
 激しい運動をすると活性酸素が発生することが分かっています。
・ストレスも活性酸素が増える原因です。
 強いストレスを受けると、脳から副腎皮質ホルモンが分泌され、その刺激でアドレナリン 
 などのホルモンが分泌されて交感神経が活性化し、白血球に一種である顆粒が増殖しま
 す。
 顆粒は体内に侵入した病原体などの異物を攻撃しますが、活性酸素を大量に放出します。 
 増えすぎると体の細胞にも活性酸素の害を及ばせますし、死ぬときにも大量の活性酸素を 
 放出します。
・自宅で簡単にできるストレス解消法は、入浴が効果的
 少しぬるめのお湯にじっくり浸かってリラックスすることが有効です。
・過労や睡眠不足は大敵です。
 十分な休養と睡眠をとることが重要です。
・紫外線を浴びると皮膚細胞に大量の活性酸素が発生し、シミやシワの原因になります。