終活事始め

最大の終活は、健康寿命をいかに長く維持し、周りに負担・迷惑をかけない取り組みをすることだと思います。

長尾和宏先生の「病気の9割は歩くだけで治る!」

 タイトルは、前々回紹介した「長尾先生、「「近藤誠理論」のどこが間違っているのですか?」の長尾和宏先生の著作です。


 帯には、「現代病の大半は、歩かないことが原因だった」「医者に払う金があるなら、靴に使え!」とあります。


 うつ病にしても、がんにしても、アレルギーや免疫系の病気にしても、現代においていろいろな病気が増えているのは、私たちが歩かなくなったため、病気の大半は、歩かないためと述べられています。
 医療というものは、本来、食事療法、運動療法があって、3番目に薬物療法がくるはずなのに、ここ数十年、薬が一番上になっているともおっしゃっています。


 江戸時代の庶民は、1日3万歩あるいていたのだとか。
 現代は、公共交通機関が発達しているし、サラリーマンは地位が上がるほど歩かなくなって、課長・係長クラスは7千歩、部長クラスは5千歩、車付きの重役は3千歩との調査もあるようです。


 歩くとなぜがんにならないかについてご説をまとめてみました。
 がんの直接的な原因は遺伝子の傷である。
 遺伝子の傷は、親から受け継いだ遺伝子によるものもあるが、大半は、たばこや紫外線、化学物質、ストレス、バランスの悪い食事などの後天的な要因、あるいは突然変異による。
 通常は、傷ついても修復されるが、細胞分裂のときに傷ついたままの遺伝子がそのままコピーされてしまうことがある。
 コピーミスは老化に伴って増えるため、がんは、老化現象であるとも言われる。
 遺伝子の傷がいくつか重なった結果、がん細胞が生まれてしまう。
 健常人でも1日に5千個のがん細胞が生まれては消えていくという説もある。
 体内で生まれたがん細胞を見つけ出して、退治してくれるのが、体にもともと備わっている免疫システム。パソコンのウイルス対策ソフトと同じ働きをしてくれている。
 免疫力が低下していると、一部のがんを取り逃がしてしまったり、遺伝子の傷がつきやすくなる。
 だから、免疫システムの働きを高めることが大事。
 その一番の方法が歩くこと。
 歩くほどに、免疫細胞たちが活性化される。
 適度な運動を行っている人は、がん細胞を撃退してくれるNK細胞の活性が高まることが最近の研究でも明らか。
 「適度」な運動ではなく、ハードな運動は、細胞や遺伝子を酸化させ傷つける活性酸素を増やしてしまうので、免疫力を下げてしまう。
 適度な運動として、歩くことが最適。


 また、介護が必要となる原因で、最も多いのが脳卒中で、その次が認知症で、これについては、次のように述べられています。


 脳卒中は、血管が老化して動脈硬化が進行して起こるもの。
 血管の老化は、加齢が一因であるが、何よりも、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常、肥満など歩かないことが原因で血管の老化を速める。


 認知症が増えているのは、生活習慣病が増加していることに関係している。
 糖尿病になると認知症になるリスクは2倍になるという研究結果がある。
 たばこを吸っていると認知症リスクは2~3倍になる。
 認知症予防の方法は、歩くことというエビデンスがある。
 歩くとセロトニンという幸せホルモンがどんどん分泌される。


 脳が衰える一番の原因は、脳に届く酸素の量が減ること。
 1分間に体に摂り入れることができる酸素の量(最大酸素摂取量)は、20歳ころをピークに年齢を重ねるにつれ下降する。
 有酸素運動をすることで、最大酸素摂取量は鍛えることができる。
 歩くことは、血流の促進もするので、脳に酸素が行き渡るようになる。
 さらには、神経間のネットワークを活性化させ、脳の神経細胞の数を増やすことも期待される。


 長尾先生は、香川県善通寺市の出身で、同じ出身の「空海」を尊敬しているのだそうで、
日々、山と渓谷を駆け巡ったからこそ、セロトニンがたくさん分泌され、いろいろな真理に目覚めることができ、芸術的な才能も開花したのだろうと考えられており、空海限らず、松尾芭蕉や千日回峰行の酒井氏などを例に偉人達が偉業を成し遂げたのは歩いていたからと述べられています。


 この本を読んでいた頃の雑誌PRESIDENT2023.3.3号に有田秀穂「歩けば脳が活性化する お遍路さんは何故歩くのか?」の一説が紹介されていました。
 空海―お遍路、長尾先生の話と関係深く興味深かったのですが、同じ内容なので納得性が高まる次のような内容です。
 ウォーキングのように一定のリズムをもった運動を集中しながら行うと「セロトニン神経」が活性化することが分かっている。
 セロトニン神経が活性化してセロトニンの分泌量が増えると、リラックスできたり、ネガティブな感情を軽減することができる。
 セロトニンの分泌量を高いレベルで維持するためには日頃から運動習慣が大事になるが、毎日継続して歩き続けるお遍路は間違いなくセロトニン神経を活性化させてくれる。


 私もできるだけ毎日歩いているのですが、それほどの効果を現在感じ得ていませんが、歩き続けたいと思います。