終活事始め

最大の終活は、健康寿命をいかに長く維持し、周りに負担・迷惑をかけない取り組みをすることだと思います。

睡眠について

 睡眠は、心身の疲労を回復する上で最も重要なものですが、その量が不足したり、 質が良くない場合は、生活上の支障や健康上の問題をもたらします。


 私は、年のせいか眠りが浅く、それを補おうと寝床で無理に横たわっていることもあり、さらには、アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβの除去がおこなわれる睡眠のゴールデンタイムおいての深い眠りになっているのか不安があります。ついつい昼寝をしてしまうことの是非も疑問でした。


 和田秀樹先生は、人間の幸福度に最も関係しているのは、「上司」と「睡眠」という説を紹介し、質のいい睡眠をとれないと、セロトニンなどの脳内の神経伝達物質の働きが弱まり、免疫力が低下し、「健康寿命」を縮めるとしています。
 逆に、「眠れなかったら寝なくていい。不眠で死ぬことはない。夜眠れないのなら、昼寝をすればいい。就寝や起床時間に縛られず、疲れたら眠り、眠くなったら眠る方が合っている。」と乱暴なことも言っています。


高齢者の睡眠は6時間で十分!
 平成 26 年 3 月 厚生労働省健康局による「健康づくりのための睡眠指針 2014」によると、夜間に実際に眠ることのできる時間、つまり一晩の睡眠の量は、成人してからは加齢するにつれて徐々に減っていき、夜間の睡眠時間は 10 歳代前半までは 8 時間以上、25 歳 で約 7 時間、その後 20 年経って 45 歳には約 6.5 時間、さらに 20 年経って 65 歳になると 約 6 時間というように、健康で病気のない人では 20 年ごとに 30 分ぐらいの割合で減少していくことが分かっているのだそうです。
 必要な睡眠時間以上に長く睡眠をとったからといって、健康になるわけではなく、 年をとると、睡眠時間が少し短くなることは自然であることと、日中の眠気で困らない程度の自然な睡眠が一番であるとしています。
 一方で、夜間に寝床で過ごした時間は、20〜30 歳代では 7 時間程度ですが、中年以降では長くなり、75 歳では 7.5 時間を越え、無駄に寝床に入っているようで、認識を改めなくてはいけませんね。


睡眠は脳が“アミロイドβ”を掃除するために必要な時間
 アルツハイマー型認知症の患者の脳には、“アミロイドβ”という脳が活動したときに発生する老廃物の一種であるタンパク質が集まり、老人斑を形成していることから、“アミロイドβ”が排出されないまま脳に蓄積されることが、脳の神経細胞を破壊し認知症を発症させるのではないかと考えられています。


 この“アミロイドβ”については、睡眠により、脳の神経細胞の約50倍の数のグリア細胞が脳のアミロイドβも含む老廃物を食べることにより排出されるようなのですが、このグリア細胞は深い睡眠時にもっとも活発に働き、その効率は日中起きている時間の10倍から20倍になるので、“アミロイドβ”は、「起きている間に蓄積し、深い睡眠により除去される」というサイクルを繰り返しているというメカニズムのようです。
 高齢者は、「メラトニン」という睡眠を促すホルモンの分泌量が減ることにより、眠りが浅くなるので、“アミロイドβ”が蓄積しやくなる傾向があり、認知症になるリスクが高くなるということなのです。


『睡眠のゴールデンタイム』は間違え!
 睡眠のゴールデンタイムとは、22時〜2時の4時間をいい、それは、この時間帯が深い眠りのノンレム睡眠の時間帯とか、美容のための成長ホルモンが集中的に分泌される時間帯とかがその理由だったのですが、睡眠中に分泌される成長ホルモンの分泌は、時間帯で決まっているわけではなく、質の良い眠りと十分な時間が実現できていれば、成長ホルモンは、特に睡眠の前半でしっかり分泌されるので問題ないのだそうです。


 睡眠研究の世界的権威である西野精治博士(米国スタンフォード大学)によると、夜眠りにつくと短時間で最も深いノンレム睡眠に入り、この約90分間の第一周期目のノンレム睡眠が”黄金“で、睡眠の質を決定し、この睡眠で、成長ホルモンの70~80%が分泌され、身体の修復や再生をもたらしてくれるのだそうです。ノンレムとレム睡眠は交互に起こり、1サイクルが90~120分で、ノンレム睡眠は、寝始めに長く、次第に短くなるのだそうです。


昼寝は推奨 15~20分で!長時間は寝起き時に不快をもたらす!
 日本成人病予防協会のHPによると、午後に眠くなってしまうのは自然なことであり、睡眠不足かどうかは関係ないそうです。
 大脳は何かに集中している時は、ごく一部の脳細胞が猛烈に活動している状態になりますが、ずっと働き続けるとオーバーヒートしてしまうので、自己防衛のために眠気信号を発信するようで、以前は、昼寝は夜の安眠を妨げるという考え方があり、良くないとされていましたが、近年の研究では、高齢者の昼寝は健康のためにはむしろ奨励すべきこととされているようです。


昼食後の眠気の原因は、大きく2つあって、
 1つ目は、食後の消化活動が始まると、脳に「食べることは終了した」という情報が伝
えられると同時に、「眠ってもいい」という情報に切り替わるもの。
 2つ目は、食事に関係なく生体リズムによる影響でのもので、午後2時位にそのピーク
が来るのが一般的なのだそうです。だだ、個人差があるので、その人が眠くなる時間に眠るのが理想的で、目安としては正午~午後3時頃が望ましいのだとか。
 軽い眠気を追い払う仮眠をとるなら、15~20分程度で十分で、逆に、中途半端に1時間位睡眠をとると、深い睡眠にまで入ってしまうので、深い睡眠の状態からいきなり目を覚まそうとすると、かえって頭がぼーっとしたり、不愉快になってしまうからなのだそうです。


 日本成人病予防協会のHPにかかわらず、長く昼寝をしてしまう根本的な原因は、夜間の睡眠の質の低下、質の良い睡眠をとれていないことにあり、この悪循環に陥っているケースが多いのではないか、こうなってしまっては、睡眠中に行われるべき心身の休息やメンテナンスが不十分で、心疾患を始めとして様々なリスクを高めることに繋がるので、悪循環に陥らないよう長い昼寝は避けるべきという見解の方が納得できます。


 年をとると、訳の分からない夢で夜の眠りが浅いなどで、目覚めの悪い朝を迎えた日の昼寝の気持ちよさはこの上ないもので、寝起きもさわやかなのは間違えないところですよね。ただ、悪循環に陥らないよう、まずは、夜の睡眠を高めるため、常に「メラトニン」の分泌量を増やすようにしなくてはいけませんね。


寝だめで睡眠負債を解消することは困難!
 現役時代は、土日のどちらかは出勤していたので、出勤しないどちらかの日昼食時には酒を飲み、そのあと昼寝して睡眠負債を解消しているつもりでいました。
 ところが、人は目が覚めている間は、常に情報収集を余儀なくされていて、起きているときに生じるコストが睡眠負債となって、睡眠することにより精算されるわけですが、いわゆる週末の寝だめだけで返済をするのは困難で、毎日40分の睡眠負債を解消するのに約3週間かかるのだそうです。


 でも、昼酒後の昼寝は気持ちよくてストレスも大いに発散されます。夕方まで寝てしまうことも度々で、夜の睡眠に支障をきたすこともありましたが、この昼寝の効果は睡眠負債解消だけの問題ではないですよね。


 前出の厚生労働省健康局「健康づくりのための睡眠指針 2014」には次のように書かれています。
 「毎日十分な睡眠をとることが基本ですが、仕事や生活上の都合で、夜間に必要な睡眠時間を確保できなかった場合、午後の眠気による仕事の問題を改善するのに昼寝が役に立ちます。午後の早い時刻に 30 分以内の短い昼寝をすることが、眠気による作業能率の改善に 効果的です。」


 その他、睡眠指針でポイントとしているいくつかを抜き書きしてみます。
・良い睡眠で、からだもこころも健康に
・適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを
・睡眠薬代わりの寝酒は睡眠を悪くする 就寝前の喫煙やカフェイン摂取を避ける
・睡眠不足や不眠は生活習慣病の危険を高める 睡眠時無呼吸は生活習慣病の原因になる 肥
 満は睡眠時無呼吸のもと
・睡眠による休養感は、こころの健康に重要
・体内時計のリズムを保つ 朝目が覚めたら日光を取り入れる 夜更かしは睡眠を悪くする
・睡眠不足が蓄積すると回復に時間がかかる 午後の短い昼寝で眠気をやり過ごし能率改善
・熟年世代は朝晩メリハリ、昼間に適度な運動で良い睡眠
・寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る 年齢にあった睡眠時間を大きく超えない習慣を
・眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない
・眠ろうとする意気込みが頭を冴えさせ寝つきを悪くする
・眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
・睡眠中の激しいいびき・呼吸停止、手足のぴくつき・むずむず感や歯ぎしりは要注意
 眠っても日中の眠気や居眠りで困っている場合は専門家に相談
・眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を 薬剤は専門家の指示で使用