終活事始め

最大の終活は、健康寿命をいかに長く維持し、周りに負担・迷惑をかけない取り組みをすることだと思います。

死の迎え方

スカイトップ

 前回の「自宅で死を迎えること」に引き続きで恐縮ですが、NHKのヒューマニエンスという番組で取り上げていた「“死の迎え方”ヒトの穏やかな死とは」についてです。


  本人の死因(厚生労働省 人口動態統計2022)は、次のようになっています。
  1位 がん(悪性新生物)
  2位 心疾患(高血圧性を除く)
  3位 老衰
 老衰は、全死亡の1割の約18万人で、85歳以上の死亡総数では1位です。
 老衰とは、高齢者で他に記載すべき死亡の原因がないいわゆる自然死とされています(厚生労働省「死亡診断記入マニュアル」)。


 死亡場所別死亡数(2022厚生労働省人口動態統計)は、次のようになっています。
  70年前の1954年ころ自宅で亡くなる方は69.1万人、病院7.5万人
  1977年ころに自宅・病院がほぼ同数
  2022年には病院101.1万人、自宅27.3万人、施設17.2万人
 以前は、見取りは家庭での出来事だったのですがが、アウトソースしてしまって非日常的なことになってしまっているとのことでしたが、前回書いたように、少しずつ自宅での看取りも増えてきているのも事実です。


 死をどのように迎えるかは、本人ばかりでなく家族にとっても大きな問題ですが、8割の人が死期が迫ったら延命治療ではなく、穏やかに苦しまないで、最後まで生きたいという希望を持っていて、理想の死に方として、最後まで自分らしくありたいと願っているのだそうです。
 そのためには、自分が最後までどう生きたいかを明確にしていくことが重要で、それが家族に伝わっていないと、不本意な延命治療を受けざるを得なくなってしまいます。


 番組で大変参考になったことが2つあります。
 その1つは、近年、ヒトの死の兆候を捉えるのにBMI値が注目されているということです。
 BMIとは、肥満度を示す体格指数で、「体重kg/(身長)²」で算出されるアレです。


 見るべきは、十分な水分や食事を摂取しているのにBMI値が減少している場合です。
その場合には、体はもはや栄養を利用できなくなっていて、死への歩みは止められない兆候であるということです。
 そして、その兆候は、死の5年程度前から出始めるのだそうです。
 5年とはずいぶん長いと思われますが、人間は成長に20年程度要するので、死ぬ準備も5~6年あってよいということのようです。
 現在は、多くの人は85~95歳の間で「生理的な死」を迎えると考えられています。


 過去の研究からBMI値が」12.0を下回ると生命維持は難しくなることが分かっているのですが、そうした場合においては、水分を摂ることすら苦痛になる恐れがあります。
 番組で紹介された事例では BMI16.0程度で死亡していました。


 腎臓などの臓器の機能低下しているため、摂取した水分は尿として排出されず、その多くが体内に溜まっていき、腹水やむくみの原因となっています。
 オーバーフローした水は肺の中に移っていき、それが痰になってゴボゴボして肺水腫という状態になったり、呼吸困難が起きてきます。


 食べられなくなった分だけ栄養を補うか?水分を補うか?ということですが、死にソフトランディングさせるポイントはケアの引き算で、本人にとって苦痛を徹底的に除くことを考えた場合、生きるために必要な水分や当たり前に食べることが必要でなく、むしろそこを減らしていく、点滴、人工的な栄養にも言えることですが、ケアを除いて引き算をしていくことを考えてはということです。
 体が衰弱した人には、生命維持に欠かせない水分と栄養が供給され、点滴など(経静脈栄養)や、胃ろうなど(経管栄養)が施されますが、終末期には、それをあえて制限するということです。


 BMIで死の過程がわかると、具体的に最後に向けて準備をするきっかけになり、それが気持ちを整える期間にもなりますので、引き算を考え、自分が最後をどう迎えたいのか意思の表明をして文章に書いておくことが残されたものの判断に重要な資料となるとのことです。


 2つ目は、死の過程は苦しいか?ということです。
 死亡する直前に行う特徴的な呼吸が下顎呼吸(全体の約50%にみられるもの)です。
 下顎呼吸とは、口や下顎を喘ぐようにパクパクして必死に気道を広げ、空気を体内に取り入れようとする呼吸(死亡直前、重篤な呼吸不全)ですが、呼吸としてはほとんど機能していない呼吸です。
 (人は最後に息を吸って死に至るもので、これが“息を引きとる”ということ)
 苦しそうに聞こえますが、穏やかな状態と解釈する専門家もいます。
 血中の酸素濃度は落ちていき、脳内麻薬であるエンドルフィンが大量に出ているので、穏やかな気持ちでいると考えられているのだとか。


 脳内麻薬と呼ばれる物質がエンドルフィンで、苦しさや痛みなどを感じたときに分泌され、様々な部位で働き、苦痛の緩和や多幸感をもたらすと考えられています。
 さらに、エンドルフィンは血液中の酸素が不足したときにも分泌が増えることも分かっているのだそうです。


 見守る家族は、これを知っているか否かで、最後を看取る気持ちが全く違いますね。